
平成22年5月26日(水)
■大山委員
民主党の大山昌宏でございます。
今回は、アイルランドとの社会保障に関する協定について質問をさせていただきたいと思います。
何年か前のことになるんですが、私が高等学校で講師として働いていたときに、同僚の外国人の先生がおりました。その方はニュージーランド人だったんですけれども、二年だか三年だかの勤務を終えて本国に帰られるときに、日本の一時的に加入していた年金制度から脱退をしたい、そういう必要があるので、脱退一時金の申請方法を、どういうふうにしたらいいのか調べたいと言われまして、一緒に社会保険事務所についてきてくれないかと言われ、一緒に行った経験があります。
そのときに私も感じたんですけれども、申請の手続が非常に複雑であり、日本人の私として、説明を聞いていても、すごく難しいというふうに思いました。本人は実際には本国へ帰ってから申請するということでありますが、もっと手続を簡単にできないかなとそのとき感じたことを今でも記憶しています。
そしてまた、実際に、手続が非常に面倒であるということで、掛け捨てになってもいいから手続をしない、そういった人が非常に多いという話もお伺いしております。幸い私の友人は無事手続を終えたということで、後日メールで、ありがとうございましたというふうにいただいたんですけれども。
今になって思うことですけれども、今回のような協定がそのときにもし結ばれていたのであれば、私とか私の友人が感じたような不都合、そういったものがなかったのではないかなと思います。ぜひ、日本国民を含めた多くの方々が社会制度に関する手続をする際に不便を感じないように、また社会保障費の二重払いを防ぐという意味でも、こういった協定の締結を進めていただきたいと思っております。
では、今回の協定の締結の経緯や内容について、まず私の経験を踏まえて質問させていただきたいと思います。
今回は、アイルランドとの間で、双方の国の滞在や在勤者について社会保障費の二重払いなどの不利益をこうむらないようにするという協定であります。大変有意義なものであると思います。改めて、今回の協定の内容と交渉の経緯をお聞かせいただけますでしょうか。
■武正副大臣
大山委員にお答えいたします。
日本とアイルランドの間には、今御指摘のように、企業等から相手国に派遣されている駐在員などが両国の年金制度に加入する義務を負っている二重加入の問題のほか、掛け捨て、相手国での加入期間が短いために年金の受給に必要な期間を満たせないということ、こういった問題。また、加えて、アイルランドの年金を受け取るための最低加入期間が二〇一二年に今までの五年から十年に変更される予定であるため、より掛け捨てのリスクが高まることが見込まれる。こういったことに加えまして、企業そしてまた個人の双方の負担が大きいということで、経済界からも強い要望があったところであります。
こうしたことを踏まえて、二重加入の問題を解消するために年金制度に係る適用法令の調整を行うこと及び掛け捨ての問題を解消するための保険期間の通算を行うことを内容とする日・アイルランド社会保障協定を締結することにしたものでございます。昨年の三月に交渉を開始しまして、昨年の十月二十九日にダブリンで署名を行ったところでございます。
■大山委員
今回はアイルランドとの間の協定ということですが、これまで同様の趣旨の協定が他国との間でも結ばれてきていると思います。それらについて、どういった国と協定を結んでいるのか、お聞かせください。
■武正副大臣
発効順で申しますと、これまで欧米諸国など次の十カ国と社会保障協定を締結しております。ドイツ、平成十二年二月一日発効、イギリス、平成十三年二月一日発効、韓国、平成十七年四月一日発効、アメリカ、平成十七年十月一日発効、ベルギー、平成十九年一月一日発効、フランス、同年六月一日発効、カナダ、平成二十年三月一日発効、オーストラリア、平成二十一年一月一日発効、オランダ、同年三月一日発効、チェコ、同年六月一日発効ということでございます。
また、スペイン、イタリアについては、協定については昨年の国会で御承認をいただいておりますが、今、発効のための準備中ということであります。
先ほど委員の御指摘のニュージーランドについては、まだこうしたことには至っていないということでございます。
■大山委員
ぜひニュージーランドも検討していただきたいなと思います。
今回の相手国であるアイルランドにつきましては、どのような企業あるいはどういった産業の関係者が滞在しているのか、また、逆に、アイルランドの方々が、どういった関係の方々が日本に滞在しているかなど、両国の交流関係というのもそれぞれにあると思いますので、アイルランドについて、また協定の必要性についてお聞かせいただきたいと思います。
■武正副大臣
二年前、平成二十年十月時点において、日本からアイルランドに派遣されている企業駐在員などで両国の年金制度に二重加入されている方、要は本協定によって恩恵をこうむられると推定される方は百五十名、アイルランド年金制度の保険料免除による日本側の負担軽減額は年間約二億円、これは厚労省の試算であります。
また、どんな企業が今アイルランドにということでありますが、日本からアイルランドに進出している企業数は、これは外務省の調査でありますが、同平成二十年十月現在で四十社。内訳で主なものを挙げますと、大和証券グループ、三菱UFJ、武田薬品等というところでございます。
■大山委員
今後締約が必要とされている国とかがどうかなということについてお伺いしたいんですが、協定締結交渉を行う際には、相手国を選定する段階で、その国の在留邦人の数とか経済活動の規模、それから実際に社員等を派遣している企業もしくは経済界からの要望を取り入れていることと、先ほども少しお話ありましたが、そういった点を考慮されていると思います。 まだ協定を結んでいない国に関しまして、この国と協定を結んでほしい、そういった要望が経済界を中心としてもしあれば、お聞かせいただきたいと思います。
■武正副大臣
この間、社会保障協定を結んできた国というのは、やはり在留邦人の多い国というものがその対象に挙がっております。しかし、必ずしも、在留邦人が多いけれどもまだ結んでいない国もある。それは、やはり相手国の社会保障制度の現状というものにかんがみた結果でもあるわけであります。
今、経済界から特に要望が上がっていたのは、イタリア、ブラジル、スペイン、ハンガリー、スウェーデン、フィリピン、メキシコ、ポーランド、ギリシャということで、先ほど、イタリア、スペインは既に署名、また、ブラジル、ハンガリー、スウェーデンについては交渉、協議、あるいは作業部会設置など、経済界からの要望も踏まえて作業を進めているところであります。
政府としては、こうした経済界からの要望の多寡に加えまして、先ほど触れました相手国の社会保障制度における負担規模、二国間関係等の要素を踏まえて、優先度の高い国から順次交渉を行っておりますが、前提として、我が国、相手国の双方からの派遣者が、相手国における社会保障の保護を十分受けられるというのが前提であります。
我が国はこれまで、どちらかというとヨーロッパを中心に社会保障協定を締結してきたため、先ほど要望の中では、アジアということではフィリピンが挙がっておりましたが、アジア諸国との協定締結の可能性についても検討していくことが必要と考えております。ただ、アジア諸国の中にはやはり社会保障制度が十分発達していない国が多いため、今後、これらの諸国の社会保障制度の成熟度、あるいは経済界からの要望も踏まえて、協定締結の可能性を検討していく考えであります。 先ほどのフィリピンについては、可能性を検討するために、相互の社会保障制度に関する情報交換を行う作業部会を設けまして、そうした作業を実施しているところでございます。
■大山委員
経済規模の大きな国からそうでない国まで、日本と相手国との関係等を踏まえていろいろ御検討中であるということです。
そういった中、幾つか国名が今挙がりましたが、協定を結んでいく具体的な順番ですとか、今お話ありましたけれども、今後の締結に向けた交渉の方針とか、あと、政府としてそろそろ協定を結ぶべきだと考えている国とか、イタリアとかそのあたりはというような話もありましたが、締結が進みつつある国もあるということですが、そろそろ協定を結ぶべきだと考えている国とはもうおおむね結んでいるというふうにお考えなのか、これから結んでいくべきだと考えている国がまだまだたくさんあるのか、そういったあたり、少しお伺いできればと思います。
■武正副大臣
社会保障協定締結の申し入れがあった国について、先ほど幾つか挙げたところであります。ルクセンブルク、フィリピン、ブラジル、オーストリア、アイルランド、スイス、スウェーデン、ハンガリー、ポルトガル、インド、スロバキア。また、中国、タイについては、我が国との社会保障協定締結に関心を示しているというところでございます。ただ、先ほど言ったような観点から、それぞれ協議あるいは作業部会を設けてというような形で取り組んでいるところでございます。
■大山委員
これまでは交渉の経緯とか二国間の関係等を踏まえていろいろお伺いしてきましたが、これから具体的にちょっと協定の中身についてお伺いしていきたいと思います。
やはり協定を結ぶ主眼というのは、我が国の国益を増進させる、そういった点であると思いますけれども、一義的には、我が国の邦人が海外において社会保障費の二重払いや掛け捨てのような不利益をこうむらないということが挙がってくるのは当然のことだと思います。しかし、どちらかといえば忘れられがちな点ではありますが、逆に国内の方に目を転じてみたときに、協定の効力は、国内で就労している協定締結国の、相手方の方々にも生じてくるわけでございます。
先ほどから質問をさせていただいていますように、どうしても日本人の滞在者数が多い国は交渉の優先順位を上げていきたいというところではあると思いますが、逆に、日本国内において就労者を多く出している国についても優先順位を上げていくべきではないかというふうに思いますが、お考えをお聞かせくださいませ。
■武正副大臣
各国との人的交流の実態ということで、平成二十年十月現在あるいは平成二十年十二月現在ということで、外務省あるいは法務省の数字をもとにした表を見ているんですけれども、在日外国人、御承知のように、順位を上から申せば、中国、ブラジル、フィリピン、そして韓国・朝鮮、アメリカ合衆国ということでありまして、その上位三カ国とはまだ未締結でございます。先ほど、フィリピンについては作業部会を設けて今作業を始めているというふうに申しました。中国については、先ほど、関心を示しているということもお伝えしたわけであります。六位以下を申せば、ベトナム、タイ、ペルー、インドネシア、インドということであります。
インドについては、平成二十年十一月にインドの年金制度が改正されたことによりまして、これまで事実上対象外であった日本人駐在員等の外国人労働者についても年金保険料の納付義務が課されることになったため要望が上がっておりますが、インドの年金制度の詳細な内容、実施状況についてインド側より情報収集を行っているわけなんですけれども、まだまだそうしたところをやりつつ、その結果を踏まえて対応していく、そうした可能性についても適切に検討していくという考えでございます。
■大山委員
先ほどフィリピンとかインドのお話が少しありましたが、そういった社会保障制度が十分に整備されていないがゆえに日本と協定の締結が難しいということもあると思うんですが、日本として、そういった法整備の整っていない国に対して支援など協力をしていくということはあるのでしょうか。お聞かせいただければと思います。
■武正副大臣
途上国などへの社会保障分野への支援、これは人間の安全保障の実現に向けた人づくり、国づくりの観点から重要課題の一つと認識しております。
我が国は、社会保険行政、社会福祉行政、それから社会保障協定は、この年金保険料の二重払い以外に、全部ではありませんが、健康保険料の二重払い、あるいはまた雇用保険料の二重払い、こういったものも対象にしている国もございますが、そういった意味で、労働基準、雇用、障害者福祉等の分野において、まず途上国に対して専門家を派遣して政策立案に係る助言を関係行政機関に行うこと、それから、途上国の行政官を今度日本の方で受け入れて研修を実施するなどの技術協力を行っております。
ODAのあり方に関する検討も夏をめどにということで今行っておりますので、今後とも、途上国側の具体的ニーズを見きわめつつ、社会保障分野における効果的、効率的な支援を行ってまいりたい。また、それが委員の御指摘の社会保障協定の締結につながっていくものと考えるからでございます。
■大山委員
これは質問ではないんですけれども、現在、日本で働く外国人就労者は、不況などの影響もありまして、企業からしたらコスト削減の必要性などから、極端に安い賃金もしくはそれに相当するような形でのお金の支給ということで働いているケースが多いかと思います。
例えば日本に多くの労働者が入っている国、ブラジルとか、先ほどもありましたけれどもフィリピンとか、中南米や東南アジア、アジアの国々などがあると思いますが、もちろん国によって社会保障制度が違いますので一概には言えませんが、そういった国々と協定を締結することによって企業が労働者の母国の社会保障制度に基づいて社会保険料を支払うという形になった場合、日本の社会保障制度に基づいて社会保険料を支払うよりは企業としてもコストを削減することができるのではないかというふうに思います。そうすれば、外国人労働者の利益も確保しつつ、企業のコスト削減も図れるということになるのではないでしょうか。
今は人口減少の時代であり、今後も外国人労働者の受け入れを拡大していくということも検討する必要が出てくるかと思います。先ほども交渉締結の順序などについてもお伺いしましたが、海外に進出している日本人の利便増進という視点はもちろん大切なことだと思いますが、逆に、国内で外国人労働者を雇用している企業や就労している外国の方の立場に立ってこういった制度、協定のことも考えることが大切ではないかというふうに思っておりますので、そういった点も御考慮いただければと思います。
次に移らせていただきます。
民主党は、年金制度の一元化を初めとしまして年金制度の改革をずっと訴えてきて、国政選挙も戦ってまいりました。これら年金制度の改革が実現すれば日本の年金制度は一変するということになるわけですが、こういったことによって、せっかく利便を供するためにある社会保障協定が、締結しないように何か研究されていることがあるのでしょうか。それについてお聞かせください。
■武正副大臣
今御指摘の民主党のマニフェストでは、新たな年金制度としてのいわゆる所得比例年金の創設が示されておりまして、こうした年金制度の見直しといったことが想定をされていると理解しております。
新しい年金制度については平成二十五年ということでの法案成立に向けての議論を行うというふうに承知しておりますが、社会保障協定への影響については、その具体的なあり方を踏まえて検討していくものであると考えております。
また、これまでの社会保障協定において、協定の実施に影響を及ぼすような変更があった場合に速やかに相互に通報することになっておりまして、相手から通報があった場合、その変更内容について相手国から十分情報収集を行って、締結済みの社会保障協定への影響、あるいは改正が必要かなど意見交換を行って、個別に判断することになっております。この日本とアイルランドの社会保障協定でも、第十七条にそれが盛り込まれているところでございます。
■大山委員
今お話に若干出たかと思いますけれども、日本側の制度が変わった場合に速やかに検討されるということでしたが、外国、相手国側が何か法律が変わるなり制度が変わった場合にも、やはり同じように速やかに対応していただけるというふうに考えてよろしいでしょうか。
■武正副大臣
今までもそうですし、またこの日・アイルランドでも、十七条でも、両締約国でそれぞれ変更があった場合、速やかに通報というふうになっております。
以上です。
■大山委員
我が国は既に十カ国との間で社会保障協定を発効させているというお話がさっきありましたけれども、これらの協定相手国の複数の国で勤務されているような方が実際にはたくさんいらっしゃると思います。私の地元愛知県でも、トヨタ自動車を初め大きな企業がたくさんありまして、そういった海外勤務のある企業においては、一度海外勤務になると、その後、複数の海外勤務を御経験されることがあるというふうに聞いています。それは珍しくないことだというふうに聞いています。
そこで、例えば日本で十五年、アメリカで八年、アイルランドで二年というふうに細かく分かれてしまった場合、そういった保険期間を有しているような方がいた場合、その方が日本の年金受給権を獲得するために、こういった三カ国に分かれた場合、それを通算することができるのかどうか教えてください。
■武正副大臣
日本が十五年で、アメリカが八年で、アイルランド二年ということですね。日米で通算保険期間は十五プラス八で二十三年、日・アイルランドの協定、それぞれ協定では、十五プラス二ですから十七ということで、我が国の年金受給権の確立に必要な二十五年を満たさないので、我が国における年金の受給権は確立されないわけであります。
他方、日本人の場合は、国内法上、海外居住期間は受給資格期間を満たすために算定することが可能である合算対象期間とされているため、今のケースでありますと、海外にはアメリカ八年、アイルランド二年の十年ということですから、受給資格期間として算定可能となりまして、日本の年金の受給に必要な期間二十五年を満たすことになります。
■大山委員
今わかりやすい説明でありがとうございます。
日本人に関しては、日本での年金受給資格を得るに当たっては、海外に滞在していた期間は特例措置があるというお話でございましたが、例えば、今回協定を結ぶアイルランドにおいて年金受給資格を得た日本人が、帰国されて日本に在住している場合、手続が面倒ではないのかなというふうに思う部分があるのですが、そういった方の手続に関してはどうなっているか、お聞かせいただけますでしょうか。
■岡田国務大臣
この協定が発効いたしますと、英語及び日本語が併記されたアイルランドの年金の給付申請書類を日本の年金事務所で入手することができます。そして、それを提出することもできるということであります。逆の場合もまた同じであります。この協定を締結することによってそういった両国の年金申請者の利便性が高まる、これがこの協定を締結することの一つの大きなメリットでございます。
■大山委員
本当に自分が実際そういった立場だったらどうなのかなと思うことを今回質問させていただいてきたんですが、やはり詰めて細かく対応していただいている点も非常に多く、帰国後、日本にいる人が相手国の年金受給資格を持っている場合、日本でのそういった申請も、やってみないとわからないからあれかもしれませんが、非常にケアされているんだなというふうに改めて思いました。
最後に、冒頭述べましたように、私の友人というか同僚の外国人が、日本で働いていたときの年金を脱退して、脱退一時金という形で還付の手続を行う際に、やはり非常に面倒だったと。後でメールをいただいてもそうですし、私も一緒に行って、社会保険事務所の人に聞いて、煩雑であった、大変面倒であったから、私の記憶の中に、もう五年以上も前の話だと思いますが、はっきりと鮮明に残っています。
この協定の発効によって、そういった手続が非常に便利なものになり、逆に不都合な点が解消されるのであれば、大変によいことだと思っております。今後とも、こういった社会保障協定の締結国をぜひともふやしていただいて、国民のため、また企業、そして相手国の皆様のために資するような形で御尽力していただければと思います。
これで私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました